小規模個人再生と個人再生の違い – 比較 まとめ

債務整理の方法として、「個人再生」と「小規模個人再生」という選択肢があります。名前は似ていますが、いくつかの重要な違いがあります。この比較では、両者の違いを明確にし、あなたの状況に適した手続きを見極める手助けをします。

基本的な違い

個人再生手続きには、「通常の個人再生」と「小規模個人再生」の2種類があります。最も基本的な違いは以下の通りです:

項目 小規模個人再生 通常の個人再生
対象となる債務総額 5,000万円以下 上限なし
個人再生委員 原則として選任されない 選任される
債権者集会 原則として開催されない 開催される
手続きの複雑さ 比較的簡素 より複雑
費用 比較的安価 より高額

適用要件の違い

「小規模個人再生」が適用されるためには、以下の条件を満たす必要があります:

  1. 債務総額が5,000万円以下であること
  2. 将来において継続的に収入を得る見込みがあること

一方、「通常の個人再生」は債務総額に上限はなく、5,000万円を超える場合やその他の理由で小規模個人再生が適用できない場合に利用されます。

手続きの流れの違い

個人再生委員の有無

「小規模個人再生」では、原則として個人再生委員が選任されません。個人再生委員とは、裁判所が選任する専門家(弁護士など)で、債務者の財産状況や債権の調査などを行う役割を担います。

「通常の個人再生」では個人再生委員が選任され、財産評価や債権調査などが厳格に行われます。この分、手続きが複雑になり、費用も増加します。

債権者集会の有無

「小規模個人再生」では、原則として債権者集会が開催されず、書面による決議で再生計画の可否が決められます。

「通常の個人再生」では、債権者集会が開かれ、債権者が出席して再生計画についての議論や採決が行われます。

認可決定までの流れ

「小規模個人再生」の簡略化された手続きの流れ:

  1. 再生手続開始の申立て
  2. 再生手続開始決定
  3. 債権の届出・調査
  4. 再生計画案の提出
  5. 書面による決議
  6. 再生計画認可決定

「通常の個人再生」のより複雑な手続きの流れ:

  1. 再生手続開始の申立て
  2. 再生手続開始決定
  3. 個人再生委員の選任
  4. 債権の届出・調査
  5. 財産評価
  6. 再生計画案の提出
  7. 債権者集会の開催
  8. 再生計画認可決定

費用の違い

「小規模個人再生」と「通常の個人再生」では、費用に大きな違いがあります。

裁判所への費用

費用項目 小規模個人再生 通常の個人再生
予納金 約10万円 約15万円
その他裁判所費用 約2~3万円 約2~3万円
合計 約12~13万円 約17~18万円

「小規模個人再生」は個人再生委員が選任されないため、予納金が安くなります。

専門家への報酬

専門家 小規模個人再生 通常の個人再生
弁護士 25~40万円程度 30~50万円程度
司法書士 20~35万円程度 25~40万円程度

手続きの複雑さから、「通常の個人再生」の方が専門家への報酬が高くなる傾向があります。

総費用の目安

  • 小規模個人再生:30~70万円程度
  • 通常の個人再生:40~80万円程度

債務免除額の計算方法の違い

債務の免除額(いくら返済するか)については、両者で基本的な計算方法は同じです。

  1. 最低弁済基準:債務総額の1/5以上を返済(ただし、100万円に満たない場合は100万円)
  2. 清算価値保障原則:自己破産した場合に債権者に配当される金額以上を返済

ただし、「通常の個人再生」では個人再生委員が財産評価を厳格に行うため、清算価値が高く算定される可能性があります。

認可率と成功率の違い

「小規模個人再生」は手続きが簡素化されている分、書類に不備があった場合などは認可されにくいケースもあります。一方で、「cramdown(クラムダウン)」という制度があり、債権者の同意がなくても一定の条件を満たせば裁判所の判断で強制的に認可できるという特徴があります。

「通常の個人再生」は個人再生委員が関与するため、手続き中の問題点が発見されやすく、是正する機会もあります。そのため、複雑なケースでは成功率が高まる可能性があります。

どちらを選ぶべきか

債務総額が5,000万円以下であれば、原則として「小規模個人再生」を選ぶメリットが大きいと言えます。手続きが簡素で費用も抑えられるからです。

ただし、以下のような場合は「通常の個人再生」を検討する価値があります:

  1. 財産状況が複雑で評価が難しい場合
  2. 債権者との関係が複雑で、個人再生委員の関与が望ましい場合
  3. 過去の取引や財産処分に問題があり、専門家のチェックが必要な場合

まとめ

「小規模個人再生」と「通常の個人再生」の主な違いは、手続きの簡素さと費用です。債務総額が5,000万円以下であれば、手続きが簡単で費用が安い「小規模個人再生」を選ぶメリットが大きいでしょう。

しかし、どちらの手続きが適しているかは個人の状況によって異なります。最適な選択をするためには、専門家(弁護士・司法書士)に相談することをおすすめします。多くの事務所では初回相談を無料で受け付けていますので、まずは相談してみましょう。