小規模個人再生の完全ガイド – デメリットと費用、手続きの流れを徹底解説

借金返済に困っていませんか?毎月の支払いが厳しくなり、どうすればいいのか悩んでいる方は少なくありません。日本司法書士会連合会の調査によると、債務整理の相談件数は年間20万件以上に上ります。そんな中で、自宅を手放さずに借金を大幅に減額できる「小規模個人再生」という選択肢があることをご存知でしょうか。

小規模個人再生は、自己破産とは異なり、マイホームや車などの財産を守りながら債務を整理できる制度です。クレジットカードの返済に行き詰まっている方や、住宅ローンを継続したい方にとって、検討する価値のある方法かもしれません。

この記事では、小規模個人再生のメリット・デメリット、かかる費用、手続きの流れなどを分かりやすく解説します。あなたの状況に最適な債務整理方法を見つける手助けとなれば幸いです。

  1. 小規模個人再生とは?通常の個人再生・自己破産との違い
    1. 小規模個人再生・通常の個人再生・自己破産の比較
  2. 小規模個人再生のメリットとデメリット
    1. メリット
    2. デメリット
  3. 小規模個人再生に必要な費用の内訳
    1. 専門家への報酬
    2. 裁判所への費用
    3. 総費用の目安
  4. 小規模個人再生の手続きの流れ
    1. 1. 専門家への相談・依頼
    2. 2. 債権者への受任通知の送付
    3. 3. 債権調査と財産調査
    4. 4. 再生計画案の作成
    5. 5. 裁判所への申立て
    6. 6. 再生手続開始決定
    7. 7. 債権の調査・確定
    8. 8. 再生計画案の提出・決議
    9. 9. 再生計画の認可決定
    10. 10. 再生計画に基づく返済の開始
    11. 11. 再生計画の遂行・完了
  5. 小規模個人再生中の生活への影響
    1. クレジットカードと借入への影響
    2. 住宅ローンへの影響
    3. 車の所有と購入
    4. 仕事と職業への影響
  6. 小規模個人再生が向いている人・向いていない人
    1. 小規模個人再生が向いている人
    2. 小規模個人再生が向いていない人
  7. よくある質問と回答
    1. Q1: 小規模個人再生と任意整理はどう違いますか?
    2. Q2: 小規模個人再生中に引っ越しはできますか?
    3. Q3: 小規模個人再生中に病気や失業で返済できなくなった場合はどうなりますか?
    4. Q4: 配偶者や家族に影響はありますか?
    5. Q5: 小規模個人再生後、いつからローンが組めるようになりますか?
  8. まとめ:専門家に相談して最適な選択を

小規模個人再生とは?通常の個人再生・自己破産との違い

小規模個人再生は、民事再生法に基づく債務整理方法の一つで、債務総額が5,000万円以下の個人を対象としています。通常の個人再生よりも手続きが簡略化されており、債務者の負担が軽減されるのが特徴です。

小規模個人再生・通常の個人再生・自己破産の比較

項目 小規模個人再生 通常の個人再生 自己破産
対象となる債務総額 5,000万円以下 上限なし 上限なし
手続きの複雑さ やや簡略化 複雑 比較的シンプル
個人再生委員 原則不要 選任される 不要
債務の減額 原則1/5~1/10に減額 原則1/5~1/10に減額 全額免除
財産の処分 基本的に処分不要 基本的に処分不要 処分対象
住宅ローン 住宅資金特別条項で継続可能 住宅資金特別条項で継続可能 原則として喪失
返済期間 原則3年(最長5年) 原則3年(最長5年) なし
信用情報への影響 5~10年間記録 5~10年間記録 7~10年間記録

最も大きな違いは、小規模個人再生では原則として個人再生委員が選任されないため、手続きがシンプルになり、費用も抑えられる点です。また、自己破産とは異なり、一定の財産を保持したまま借金を減額できるのが大きな特徴です。

小規模個人再生のメリットとデメリット

小規模個人再生を検討する前に、そのメリットとデメリットを理解しておきましょう。

メリット

  1. 財産を維持できる: 自己破産とは異なり、自宅や車などの財産を手放さずに済みます。特に「住宅資金特別条項」を利用すれば、住宅ローンを継続しながら他の債務だけを減額することが可能です。
  2. 債務の大幅減額: 債務を原則として5分の1から10分の1に減額できます。例えば500万円の借金があれば、50万円~100万円程度まで減額される可能性があります。
  3. 手続きの簡略化: 通常の個人再生と比べて、手続きが簡略化されています。個人再生委員が原則として選任されないため、専門家への費用も抑えられます。
  4. 収入や職業への影響が少ない: 自己破産では制限される職業(弁護士、公認会計士など)に就いている場合でも、小規模個人再生なら職業を継続できる可能性が高まります。
  5. 将来的な信用回復: 3~5年の返済計画を完了すれば、残りの債務は免除され、その後は新たな借入れも可能になります。自己破産よりも早く信用を回復できる可能性があります。

デメリット

  1. 一定の返済能力が必要: 減額された債務を3~5年間で返済する能力がないと認められないため、安定した収入源が必要です。
  2. 手続きの複雑さ: 自己破産に比べると書類作成や手続きが複雑で、専門家(弁護士・司法書士)のサポートがほぼ必須です。
  3. 費用がかかる: 弁護士・司法書士への報酬、裁判所への予納金など、合計で30~70万円程度の費用が必要です。
  4. クレジットカードの利用制限: 手続き中および手続き後一定期間は、クレジットカードの新規作成や利用が難しくなります。
  5. 信用情報機関への記録: 信用情報機関に5~10年程度、債務整理をしたという事実が記録されるため、新たなローンの審査が厳しくなります。

小規模個人再生に必要な費用の内訳

小規模個人再生手続きにかかる費用は、大きく分けて「専門家への報酬」と「裁判所への費用」の2種類があります。

専門家への報酬

手続きの複雑さから、ほとんどの場合、弁護士や司法書士に依頼することになります。報酬の相場は以下の通りです:

専門家 費用相場
弁護士 25~40万円程度
司法書士 20~35万円程度

事務所によって料金体系は異なります。また、債権者数や債務額によって変動することもあるため、複数の事務所に相談して比較検討することをおすすめします。初回相談は無料の事務所も多いので、積極的に活用しましょう。

裁判所への費用

費用項目 金額
予納金 約10万円(通常の個人再生より安い)
収入印紙代 約1万円
郵便切手代 数千円程度
その他実費 数千円~1万円程度

裁判所への費用は合計で約12~15万円程度になることが一般的です。通常の個人再生に比べて予納金が安いのが特徴です。

総費用の目安

小規模個人再生にかかる総費用は、専門家への報酬と裁判所への費用を合わせて、約30~70万円程度となります。これは通常の個人再生(40~80万円程度)と比べるとやや安く、自己破産(20~50万円程度)と比べるとやや高めです。

費用の捻出が難しい場合は、分割払いに対応している事務所もあります。また、法テラス(日本司法支援センター)の民事法律扶助制度を利用できる場合もありますので、相談してみるとよいでしょう。

小規模個人再生の手続きの流れ

小規模個人再生の手続きは、大きく分けて以下のステップで進みます。

1. 専門家への相談・依頼

まずは弁護士や司法書士に相談します。この段階で、あなたの状況を詳しく聞き取り、小規模個人再生が適切な選択かどうかを判断します。適していると判断された場合、正式に依頼契約を結びます。

2. 債権者への受任通知の送付

専門家が債権者(借金の相手)に「受任通知」を送付します。これにより、債権者からの取り立てや督促が止まります。精神的な負担が大きく軽減されるポイントです。

3. 債権調査と財産調査

どの債権者にいくら借りているかを正確に把握するため、債権者に対して残高などを照会します。同時に、あなたの財産状況も調査します。この段階で過払い金があれば、請求することも検討します。

4. 再生計画案の作成

今後どのように返済していくかを示した「再生計画案」を作成します。小規模個人再生では、「最低弁済基準」と「清算価値保障原則」に基づいて弁済額が決定されます:

  • 最低弁済基準:債務総額の1/5以上を返済する必要があります(ただし、100万円に満たない場合は100万円)
  • 清算価値保障原則:自己破産した場合に債権者に配当される金額以上を返済する必要があります

例えば、債務総額が500万円で、財産価値が50万円の場合、100万円(債務総額の1/5)と50万円(財産価値)を比較し、大きい方の100万円を3~5年かけて返済する計画を立てることになります。

5. 裁判所への申立て

必要書類を揃えて裁判所に申立てを行います。主な書類は以下の通りです:

  • 再生手続開始申立書
  • 陳述書
  • 債権者一覧表
  • 財産目録
  • 収入・支出一覧表
  • 返済計画案
  • その他裁判所が求める書類

書類の作成は複雑なため、専門家のサポートが必要です。

6. 再生手続開始決定

裁判所が申立てを審査し、問題がなければ「再生手続開始決定」が出されます。この段階で、裁判所から債権者に対して債権の届出を促す通知が送られます。

7. 債権の調査・確定

債権者が届け出た債権の内容を確認し、異議があれば申し立てます。この手続きを経て債権額が確定します。

8. 再生計画案の提出・決議

確定した債権額に基づいて最終的な再生計画案を裁判所に提出します。小規模個人再生では、債権者集会が開かれず、書面による決議が行われることが多いです。

9. 再生計画の認可決定

債権者の多数の同意が得られるか、一定の要件を満たせば、裁判所は再生計画を認可します。小規模個人再生では、債権者の同意がなくても、裁判所の判断で「cramdown(クラムダウン)」という強制認可が行われることもあります。

10. 再生計画に基づく返済の開始

認可された再生計画に基づいて、原則3年(最長5年)の分割返済を開始します。多くの場合、毎月決まった金額を裁判所に納付します。

11. 再生計画の遂行・完了

全ての返済を終えると、再生計画は完了し、残りの債務は免除されます。これにより、晴れて債務から解放されます。

小規模個人再生中の生活への影響

小規模個人再生手続き中および手続き後は、いくつかの制限や影響があります。

クレジットカードと借入への影響

手続き中および手続き後の一定期間は、クレジットカードの新規作成や利用が難しくなります。これは、信用情報機関に小規模個人再生の事実が記録されるためです。

  • 手続き中:クレジットカードの利用は原則として不可
  • 再生計画履行中:新規のクレジットカード作成は困難
  • 履行完了後:信用情報機関の記録が消えるまで(約5~10年)は審査が厳しくなる

ただし、デビットカードやプリペイドカードは利用可能なので、それらを活用するとよいでしょう。また、キャッシュレス決済サービス(PayPay、LINE Payなど)も便利です。

住宅ローンへの影響

小規模個人再生の大きなメリットの一つが、「住宅資金特別条項」を利用して住宅ローンを継続できることです。ただし、以下の条件を満たす必要があります:

  1. 住宅ローンの返済が遅れていないこと
  2. 今後も返済を継続できる見込みがあること
  3. 住宅の価値が住宅ローンの残債以上であること

これらの条件を満たせば、住宅ローンはそのままに、他の債務だけを減額することが可能です。マイホームを手放したくない方にとっては、非常に重要なポイントです。

車の所有と購入

小規模個人再生では、20万円以下の自動車は手元に残すことができます。20万円を超える車は原則として処分対象となりますが、通勤や仕事に必要不可欠な場合は例外的に認められることもあります。

手続き中の車の新規購入は、現金での購入であれば可能です。ただし、ローンを組んでの購入は信用情報の問題で難しくなります。再生計画完了後は、信用情報機関の記録が消えるにつれて、徐々に車のローンも組みやすくなります。

仕事と職業への影響

小規模個人再生をしても、ほとんどの仕事は継続可能です。ただし、以下の職業については制限がある場合があります:

  • 弁護士
  • 公認会計士
  • 税理士
  • 司法書士
  • 保険募集人(生命保険・損害保険)
  • 証券会社外務員

これらの職業は法律や会社の規定により、債務整理中や手続き後一定期間は業務ができなくなる可能性があります。ただし、自己破産と比べると制限は少なく、場合によっては継続できることもあります。

小規模個人再生が向いている人・向いていない人

小規模個人再生はすべての人に適した解決策ではありません。自分の状況に合った債務整理方法を選ぶことが重要です。

小規模個人再生が向いている人

  1. 住宅ローンがあり、自宅を手放したくない人: 住宅資金特別条項を利用することで、マイホームを維持したまま他の債務を減額できます。
  2. 債務総額が5,000万円以下の人: 小規模個人再生の対象となるのは、債務総額が5,000万円以下の方です。
  3. 安定した収入がある人: 減額された債務を3~5年かけて返済する必要があるため、安定した収入源が必要です。
  4. 自己破産では失いたくない財産がある人: 一定の財産を維持できるため、価値のある財産を持っている場合に適しています。
  5. 職業上の制限を避けたい人: 自己破産と比べて職業制限が少ないため、弁護士や会計士など一部職業に就いている方に適しています。

小規模個人再生が向いていない人

  1. 債務総額が少ない人(100万円未満など): 個人再生には相応の費用がかかるため、債務総額が少ない場合は任意整理などの方法が適している可能性があります。
  2. 安定した収入がない人: 返済計画を履行するための安定収入がない場合、自己破産の方が適しているかもしれません。
  3. 財産をほとんど持っていない人: 処分対象となる財産がほとんどない場合、自己破産の方がメリットが大きい可能性があります。
  4. 早急に借金問題を解決したい人: 小規模個人再生は手続きに時間がかかり、その後3~5年の返済期間があります。すぐに借金問題から解放されたい場合は自己破産の方が向いています。
  5. 過去7年以内に個人再生を行ったことがある人: 過去7年以内に個人再生を行ったことがある場合、再度の個人再生は認められないことがあります。

よくある質問と回答

Q1: 小規模個人再生と任意整理はどう違いますか?

A: 任意整理は裁判所を通さず、債権者と直接交渉して返済条件を緩和する方法です。一方、小規模個人再生は裁判所を通じて債務を法的に減額する手続きです。任意整理では元金は基本的に減額されませんが、小規模個人再生では元金が大幅に減額されます。

Q2: 小規模個人再生中に引っ越しはできますか?

A: 基本的に可能です。ただし、裁判所や弁護士・司法書士に事前に連絡し、住所変更の手続きを行う必要があります。特に再生計画履行中は、毎月の返済に影響が出ないよう注意が必要です。

Q3: 小規模個人再生中に病気や失業で返済できなくなった場合はどうなりますか?

A: 病気や失業など、やむを得ない事情で返済が困難になった場合は、裁判所に「履行延期」や「計画変更」を申し立てることができます。ただし、安易に返済を怠ると、再生計画が取り消され、元の債務に戻る可能性があります。困難な状況になったら、すぐに弁護士・司法書士に相談しましょう。

Q4: 配偶者や家族に影響はありますか?

A: 基本的に、配偶者や家族が連帯保証人になっていなければ、直接的な影響はありません。ただし、共有財産がある場合や、配偶者が連帯債務者・連帯保証人になっている場合は影響を受ける可能性があります。家族の状況も含めて専門家に相談することをおすすめします。

Q5: 小規模個人再生後、いつからローンが組めるようになりますか?

A: 再生計画完了後も、信用情報機関には5~10年程度記録が残ります。その期間中は新たなローンの審査が厳しくなりますが、完全に不可能ではありません。再生計画を完了し、その後きちんと返済実績を積み重ねることで、徐々に信用を回復していくことができます。

まとめ:専門家に相談して最適な選択を

小規模個人再生は、債務を大幅に減額しながらも、住宅ローンや車などの財産を守ることができる債務整理方法です。特に安定した収入があり、マイホームを守りたい方にとっては有効な選択肢となります。

しかし、手続きの複雑さや費用、返済継続の必要性などのデメリットもあります。自分の状況に最も適した債務整理方法を選ぶためには、専門家への相談が欠かせません。多くの弁護士・司法書士事務所では初回相談を無料で受け付けているので、まずは相談してみることをおすすめします。

借金問題は放置すればするほど状況が悪化します。今回の記事が、あなたの新たな一歩を踏み出す手助けとなれば幸いです。